FT-1021(FT-1000)の修理


  ローカル局から電話があり、「FT-1021だけど、運用中にパワーが出なくなったので修理してくれないか」という相談がありました。
  お世話になっている方からの依頼ですし、当方もFT-1000を所有してますので引き受けることに。

  ファイナルトランジスタが入手できないためか?YAESUでは修理を受け付けてくれないようですねえ。
  なんとか直ると良いですが・・
  


 
・ 現状確認
  そもそも始めて分解するRIGなので、やや不安です。うまいことファイナルユニットが取り出せるのか?
  その状態で、バイアスなどの調整が可能なのか?
  結論から言いますと、以外にメンテナンス性は悪くない。こんな感じで引きずり出せました。(写真参照)
  まず、TX-IFの出力をスペアナでチェックしたところ、ほぼ0dBmの信号が出ており、IF関係は問題ありませんでした。
  (別の受信機でもFBに受信できました)
  やはりファイナルユニットの問題です。ドライブ(MRF486)の出力をチェックすると1W程度とかなり少ない。
  測り方がテキトウなのでなんとも言えませんが、10W〜20W程度は出るような気がします。(200Wをドライブするのですから)
  プリドライブの出力はさらにしょぼく、パワー計がほとんど振れません。(TX-IFの信号がほとんど増幅されてない)
  ファイナルの出力をローパス手前で測ると1W弱。やはりファイナルは死んでいるようです。
   

  ファイナルユニットを取り外しました。
  目視でチェックすると・・・
   

  R20(10Ω1W)がこげてます。
  これ、ファイナルMRF422のベースにぶら下がっているRなのですが、MRF422のベースとコレクタがショートすると、30Vがもろにかかるポジションです。
  おそらくTR内部が一旦ショートし焼き切れて、逝かれたのではないかと推測できます。
   

  出力トランスにぶるさがっている390pFも、気持ち焼けてるような気が・・
   


・ 原因・対処
  基板に実装された状態では、テスター等でTRの良否が判別できません。石を取り外しました。
  (予断ですが、この手のTRを外す時はニッパ等で切り取るのがベターと考えます。ハンダコテでこね回すと、パターンを破壊します。)
  推測どおりベースとコレクタ、エミッタ間に導通がありません。完全にオープンです。
    

  プリドライブ用の2SC2166はほとんど増幅していない?ように見えるので予防交換。
  2.2Ωは10Ω以上であったため交換しました。その他は前記のとおり。
   

  シリコングリスは一旦拭き取り、新しいものを塗りなおします。
  古いものはカサカサなっており、用を成さないと思われますので。
   

  プリドライブのQ01ですが、コレクタと放熱器がTR内部つながっているため、直接ヒートシンクにネジ止めできません。
  そのため、写真のようなプラスチック部品と雲母板で絶縁する必要があります。
  不思議なことに、ユニットをばらした時、この部品が付いていませんでした。(雲母板はあった)
  ひょっとしたら私が無くしたのかもしれませんが、事前に撮った写真にも写っていないため、はじめから無かった可能性があります。
  それとも絶縁ワッシャがかまされてたのかな。いずれにしても要注意箇所です。(30Vがショートすることなりますよ) 
    

  組み上がったPOWユニットを取付け、各部点検後、スイッチON。
  無事、POWが復活しました。後は、バイアス調整をして、各部機能点検をしておしまいです。
  パワーは問題なく200W出ています。
  意外とメンテナンス性が良く、作業しやすいRIGでした。